そのころ私とYOU は、二人とも予備校生で寮住まいをしていました。事件の合ったその日、夜の門限ぶっちぎりで札幌西口の今は無きアミュージアム、というゲーセンで遊んでおりました。確か、初代Dead or Alive <YOU注:私、このゲーム大好きでした>が入荷したころで、調べてみると96年11月末です。またその日は寒かったですが、毎年この時期の札幌では当然のことなので、気にも止めずいつもと変わらないゲームライフを送っておりました。

この時点で我々は、これから起こる地獄をこれっぽっちも予想しませんでした。



二人は、門限を破っている(良くないことです)のを知りつつゲームに興じることが過去何度もあり、当時学生だったHGW の家を第ニの家とし、またそのアパートがある街、美園を第ニの故郷と公言しておりました。



夜の札幌AMにて

札幌アミュージアム

sLy 「そろそろ美園へ行く終電なくなりますが」
YOU (ゲーム中)「うーんわかってるけどもう少し待って」
sLy 「では私も待っている間に他のゲームをやっているので」
YOU (ゲーム終わった)「本当に終電なくなるよ」
sLy (ゲーム中)「相手がガンガン乱入してくるので抜けれない」

このようなことをくりかえし、二人とも終電がなくなるのをわかっているのに結局札幌AMが閉店になる24時まで粘りました。<YOU注:まさに「いつものパターン」で、下手をすると寮で眠る回数よりも美園で眠る回数の方が多い週もあったような・・・>こんなもんじゃすまないわよ

気が付くと外は大荒れ猛吹雪、そのゲーセンの顔なじみの社員に美園まで送って欲しいと思うも運悪く彼は非番、

「歩くか」

二人は徒歩による移動を開始しました。

我々は北海道生まれの北海道育ち、多少のことならなんとかなります。ただ、いつもの惰性で「HGWは家にいるに違いない」「いや居なくても玄関の鍵は掛かってないだろう」「もし鍵が掛かっていても通路に面した台所の窓から入れば問題無し」<YOU注:当時HGWの家は鍵がかかっていないのが普通で、たまに鍵がかかっていても台所の窓は鍵が開いており、我々は自由に出入りをしていました>とアポイントを取ってない不安を揉み消すように、入荷したばかりのゲームのシステムについて話し合いながら歩きました。

私は寒さへの耐性が異様に低いことで仲間内に有名で、美園へ行く道中ですでに精神的にまいっておりました。しかし運命は非情で、吹雪は一向に収まる様子がありません。耐えるしかないのです。地下鉄の距離で4.7Km、吹雪の中の徒歩となるとかなりペースが遅く、それでもできるだけ急ぎ、一時間ほどでやっと到着しました。

美園周辺の地図





・・・ガチャ「開かない」「冗談は勘弁して」「台所の窓は?」「鍵掛かっている」 「寝ているんじゃないの?」「電話して起こす?」「いや居ないっぽい」「窓割って入る?」「XXXー?<YOU注:HGWの本名>」「待つ?」



「これ以上待つと死ぬ」





「いっそ殺してくれ」



と吹きさらしの通路で押し問答をし、私は寒さのあまり凶暴化<YOU注:当時ポール・デービスの「cool night」(ジョセフ・ウィリアムスがカバーしてた)が私のお気に入りで、夜の寒さに「♪It's gonna be a cool night」と口ずさんでいると、sLyに今の俺は本当に殺っちまうかもしれんとにらまれて止めた記憶があります>し始め、窓を割るための硬いものを探そうと辺りを物色します。それをYOU がなんとか思い止まらせ、「ほら、コンビニで何か暖かいものを買おう」となだめ、その場は何事もなく収まりました。今思えばこれでも元気な方だったのです。

話し合った結果、札幌での第三の家であるShadow宅のある中の島へ向かいました<YOU注:寒さに強い私は「2月でも野宿が可能なのは実証済みだから何とかなるよ」と待ちを提案しましたが、sLyの「お前は生き残っても俺は死ぬ」という主張により移動が決定しました>。というよりも選択肢が吹きさらしの廊下で耐えるかShadow宅に行くかの二択であり、いつ帰るとも分からないHGWを待っていたのでは、精神、肉体共に耐えられない可能性が高かったのです。まず動こう、同じ可能性なら前向きな方に賭けよう、と。

お約束

依然として吹雪は止む気配もなく、時刻は深夜一時を回りました。





二人とも思考力が低下していたためか、またもやアポイントを取り忘れていることに気付きませんでした。 (正確にいうと気付いており、次に電話ボックスを見つけたらかけようという話をしました。結局掛け忘れたのですが・・・)

道中コンビニへ寄り、私はビールとポテトチップスを、YOU はワイン一本とチーズを買い酒で熱量を稼ごうとハイペースで飲みました。天候のせいか交通量も少なく、白いかたまり二つが (一つは袋と缶を持ち、もう一つはビンと何かを持ち)5m先も見えない状態で車道の真中を歩いておりました<YOU注:あの吹雪の中、ワインをラッバ飲みしながら歩く私はかなり奇異に見えたことでしょうが、ビールを選択してしまったsLyは「余計に寒さが・・・」とドツボにはまっていました>。 自らの状況を笑い、他にも下らないことで二人でゲラゲラ笑い、死ぬ、もう死ぬとつぶやいたと思ったら突然叫んだりし<YOU注:掛け値なしに事実そのままです>、少しだけ天国が身近に感じられました。

割と近い
また、寒い時間を減らするため近道しようと知らぬ道を通り、視界の悪さも手伝ってか迷子になりました。その道で、遠くに見えた明かりを発見し、近づくとラーメン屋のちょうちんです。一も二もなく雪だるまの二人が入り、暖かさに感謝しつつラーメンを頂きました<YOU注:このとき入ったのが「どんころラーメン」という牛骨ラーメンの店で、非常においしかったのですが、その後店主が変わり(もともと「本家」と「元祖」があったのですが、元祖が本家に吸収されたように記憶しています)味が落ちました。極限状態が見せる幻の味という側面を割り引いても、あの品質の下がり具合は残念でなりません>。店主も、我々がかわいそうに見えたのでしょうか、きさくに話し掛けてくれます。我々は、恥も外聞も無く暖房器具にへばりつき体に積もった雪を落としました。




これまでの中で、何故タクシーを使わないのかと疑問に思う方もいると思います。それは当時予備校生だった二人は貧乏で、私の方は、仕送りまであと何日かというジリ貧の状態だったのです<YOU注:実は、ここまでの飲食代を合計すると、タクシーに乗れてしまうくらいの金額にはなったのですが、結果論的に、アポなしでタクシー移動をしなかったのは正解でした>。ここまでに使ったお金もYOU が一方的に出しておりました。タクシー代を惜しんだのにゲーセンでゲームしたお金はなんなんだということになりますが、それは別の問題なのです<YOU注:当時、我々は「文無しになるか閉店するか」いずれかの条件が満たされない限りゲームセンターを出ませんでした。地下鉄に乗らないと3回ゲームができるので(終電の都合もありますが)徒歩を優先しますし、私のお昼は100円のカップラーメン、sLyのお昼はゲームセンター内で売っているラムレーズンのアイスクリームがメインでした>








ついに、中の島のShadow宅に到着しました。距離的には札幌美園間よりも近いはずですが、歩くペースが遅くそれ以上の時間が掛かりました。時間は深夜ニ時半です。

中の島周辺の地図

ピンポーン・・・「居ない?」「○○ちゃーん<YOU注:shadowの本名>」「○ー○」「鍵開かない?」

私はすがるような思いで、インターフォンを連打し、近くにあったホウキを使いドアについた郵便受けを開き、そこに手を突っ込んで内側から鍵を開けようと試みます。しかし、ドアは開くはずもなく、私は閉塞感と絶望で呆然としておりました<YOU注:このとき、sLyは「台所の鍵は開いているはずだから、壁を登って(shadowの部屋は2階)台所から入ろう」と言っていましたが、何しろ極限状態で、挑戦したら落ちて怪我をすること請け合いなので、何とか止めました>

YOUが前向きにもう一度HGW宅に電話を掛けよう、と公衆電話を探しました。最後の希望です。あと三時間もあれば始発があり、寮が開くのでそれまでコンビニでしのがなければならないのかと悲観していたその時。






プルルルルル・・・ガチャ
HGW 「はい、HGWです」
YOU 「どこいってたの〜」
HGW 「sonsiと二人でShadowの家行ってから三人でファミレスで飯食ってた<YOU注:この言葉を聞いた瞬間、思わずそんしがいる=ポワ1号で迎えに来てもらえる=「助かった」と思った私は甘々君でした>
YOU 「!!!...今Shadowは?」
HGW 「いるけど、どうしたの」
YOU 「(事情を説明)」
HGW 「いやー、sonsi寝てるんだわ。ちょっと聞いてみる」

HGW ダメだ、起きない
YOU 無理やり起こして、こっちは生死が掛かってる<YOU注:このときの私のせりふ「こっちは生死がかかってる」は、しばらく仲間内での語り草になりましたが、私としては、ウケを狙ったつもりも奇抜なことを言ったつもりもなく、あるがままの自分たちの状況を説明したに過ぎません
HGW sonsi起きたけど、歩いて来いだって



運命は残酷です。この頃、車、免許持ちはsonsiだけでした。























アァァァァァァァァァァー


簡単に申しますと

sLyとYOU
札幌AMからHGW宅→HGW宅からShadow宅→中の島から電話
HGW、sonsi、Shadow一行
HGW宅からShadow宅→ファミレスで食事→HGW宅に三人で帰宅
<YOU注:いわゆる「入れ違い」という奴ですね、ハイ>

という状況でした。

業を煮やしたYOUは歩くことを決意<YOU注:私、切れるとむやみに行動的になります>、一方私は極限状態だったようで、YOU曰く何を話し掛けても「寒い」「死ぬ」としか答えなかったそうです<YOU注:本当にそれしか言いませんでした。こちらもなんと声をかけてよいやら・・・>

結局歩き始めるもすぐ挫折、タクシーを利用してHGW宅へ向かい<YOU注:実はこのときHGWは自動車学校に通っており、私は「HGWでいいから運転してきて」とお願いしたのですが「もし捕まったら仮免許なくなるし、金が足りなかったら貸してやるからタクシーで来い」ということになりました。実際にお金が足なかったのですが、あまりに壮絶な私たちの様子を見かねたのか、自分も貧乏であるにも関わらず、不足分を俺が払ってやるといって気前よく肩代わりしてくれました(大感謝)>、HGWとShadowから暖かい歓待を受けるもその横でsonsiはスヤスヤと寝てやがりました



寝顔
クソッタレ






私が殺意すら浮かばないほど追い込まれたのはこれが初めてでした。





sonsiは楽しい人です。


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